
むかし、ある山のふもとに、雨季にしか水に恵まれない貧しい村がありました。田畑には向かない土地で、人々は乾季になると深い井戸を掘り、竹筒で水をくみ上げて暮らしていました。そのため、この村は「井戸」と「竹」を意味する名で呼ばれるようになったといいます。
そんな村の様子を見かねて、ある神さまがこっそり力を貸すことにしました。

神さまは老人の姿に化けて村に現れ、不思議な力で鍋やお皿、水がめなどを次々に作り出しては、村人に分け与えました。おかげで村の暮らしはみるみる豊かになっていきました。

ところが暮らしが楽になるにつれ、村人たちは働かなくなっていきました。祭りのたびに老人から器をもらっては雑に使い、すぐに壊してしまう始末です。
このままでは村人のためにならないと悟った神さまは、ある日、道具をしまっていた蔵の扉をぴたりと閉じてしまいました。

そして神さまは村人を集め、こう告げました。「この山には、かつて天からこぼれ落ちた金銀財宝が眠っている。欲しければ、自分の手で掘り出すのだ」
半信半疑の村人たちは、山に入って土を掘り、思い思いの形に土をこね、鍋や水がめの形に仕上げて焼いてみました。すると焼き上がった器は、黄金のように美しく輝いていたのです。

評判を聞きつけ、遠くからも人が買い求めにやって来るようになり、村はこの焼き物によって豊かになっていきました。人々はこの山を「黄金の地層の山」と呼び、感謝のしるしに祠を建てて今も大切にお参りをしているということです。
おしまい
【解説】
コンポンチュナン州は、今もカンボジアを代表する焼き物の産地として知られています。この昔ばなしは、地元で親しまれている陶器づくりの起源を伝えるお話で、プノンペンの情報メディア「NyoNyum」さんと共同で絵本化しました。
「働かずに与えられるものに頼ると、人は豊かになれない」という教訓は、支援のあり方を考えるうえでも示唆に富むお話だと感じています。